日中経済交流使節団視察報告 95’

 国際経済交流実現のために、8月25日から29日の5日間、中国(上海・蘇州)ミッションを派遣した。
 国際化社会の環境変化に対応するべく、海外展開の可能性を調査、研究するための派遣であり、現地視察を行なうことにより交流を通じて調査、研修を実施した。


8月25日
 多度津を7時24分に出発、福岡経由にて2時20分、上海虹橋空港に到着。始めに今回の視察旅行においてご便宜願った「上海国際友好都市交流事業発展基金会」への表敬訪問を行った。J彭年副理事長の歓迎の挨拶の後、今日の訪中目的が経済交流を通じた日中友好使節団である主旨を話し、相互理解を深めた。
 表敬訪問後、会場と貴都大酒店に移し、第1回目の全体会議である研修を行った。講師には基金会のJ副理事長に加え、日本貿易振興会上海事務所の縣博夫氏、上海日本領事館の大薗治夫氏の三名にお願いをして「中国対外貿易状況」「上海経済情勢」「経済政策と対外投資状況」のそれぞれのテーマにて話しをうかがい、中国経済事情について研修を行った後、多度津町と交流を行っている普陀区人民政府からも張克明常務副区長を始め、数名の関係者にご出席願い、日中友好の親睦を深めるための懇談会を行った。
全体会議・研修内容の要旨
上海日本領事館 大薗治夫氏

「上海経済、貿易情勢について」

  • 中国の貿易は米国に次いで世界第2位となっている。
  • 日本は中国が1番の貿易相手国となっており、重要な存在である。
  • 中国への対外投資は、香港、マカオ、シンガポールが多い。日本の投資は慎重すぎるので遅いといわれている。
  • 94年からは、内陸部における銀行開設も認められるようになった。

日本貿易振興会上海事務所 縣博夫氏

「中国対外貿易状況ついて」

  • 国内総生産は、第3次、第2次、第1次産業の順にウエイトを置いている。
  • 上海は国営企業が多い。
  • 工業生産も順調で化学薬品、合成ゴム、車両、オートバイ、集積回路、AV、エアコンの伸びが目立つ。ハイテク産業を目差し成長率(17.4%)が高い。
  • 郊外の県の発展もめざましい。(31.5%)
  • 消費水準も上がり、インフレ率を除いても10%以上の伸びが見られる。家具、金、ビール、飲料水、原動機付自転車、電子レンジ、エアコン等普及率20%。
  • 輸出伸び41%、一時期投資の関係で輸入が伸びていたが直接投資の関係で減少している。
  • 独資の伸びが目立つ。
  • 投資金額が増え大型化投資となり独資は1年当り1千万ドル以上の投資が7割以上を占めるようになった。
  • 浦東新区は国家的プロジェクトで、将来中国の中心に置く考えである。
  • 上海への対外投資は、香港、台湾が多かったが94年以降、不動産投資の制限で低下傾向にある。
  • 蘇州市においては、郊外への中小企業の進出が主となっている。上海はコスト高で出られない現状から、昆山、蘇州への進出が多いし、今後も増える。
  • 独資が必ずしもよいということではないが、交渉するエネルギーの消費をきらうために増えている。
上海国際友好都市交流事業発展基金会 ・彭年副理事長

「経済政策と対外投資状況ついて」

  • 上海市は、工業都市から中国経済の金融、貿易の中心となり、中国の経済の機関車的役割を果たしている。いわゆる龍の頭に例えられている。
  • 市民向けアパート建設の住宅投資に力を入れている。家賃は収入の1〜2%程度で安い。これからは家賃から分譲へと変えて行く。今までの実績を踏めば、外資の投資は2年間で資金が回収出来て、15%の利益は保証出来るだろう。
  • 基幹産業は、製鉄、石油化学、発電プラント、エレクトロニクス、通信器材、自動車(ワーゲン社との合弁でサンタナを生産)の6部門である。自動車はワーゲンの他に、フォードとトヨタが候補に上がっている。
  • 上海は16の区と4県から成っているので、海外からの投資は郊外の県でも、市内でもどちらでもよい。
  • 上海は今、建築ラッシュで、2万2千ヵ所もの工事現場がある。
  • 建築ラッシュは上海だけでなく全中国におよんでおり、上海はその拠点となっている。
  • 産業廃棄物、公害等の規制は厳しく、市内は車の警笛さえもならせない。
  • 市の環境衛生局では、1日2〜3回街を清掃している。環境整備の法律も出きている。
  • 日本からの損害保険会社の進出もある。

8月26日
 午前中は業種別に別れ、工業関係は金属加工場を視察し、商業関係は浦東開発区を視察した。上海市と同じ面積の開発区には、電気メーカーなどの日中合弁企業も目立ち、中国経済政策のスケールの大きを痛感し底しれぬ中国のエネルギーを感じた。
 午後からは普陀区人民政府への表敬訪問を行い、張副区長歓迎の挨拶の後、普陀区の概要について説明をうかがった。人口で多度津の40倍以上あり、その規模の違いに圧倒されるばかりであるが、事業所数ではほぼ同等であるとのことで、これにも驚かされた。町との交流があるだけに非常に友好的であり、相互の信頼関係を深めた。その後業種別に別れて、上海・普陀区企業との懇談を行い、各企業の経営・技術・取引・投資等について話しをし、業種別研修を行った。
 その後、普陀区内のスーパーマーケットを視察し、現地市民の生活にも触れることが出来た。
全体会議・研修内容の要旨
普陀区人民政府外事弁公室 ・啓春 氏

「普陀区経済概要ついて」

  • 上海市10の区の1つで、北西に位置し、面積55km2と一番広い区である。人口83万人(戸籍数)で97年には100万人を越える見込みである。
  • 交通の便もよく、国際空港まで12km、駅まで3km、上海西駅は区内にある。
  • 商業、工業の企業大小で1千件あり、工業出荷高は2億人民元を越える。
  • 商業では日用品、飲食が発展している
  • 大学、研究所も持っている。
  • 改革開放後国際化が進み、各地との交流を盛んに行っている。
  • 工業、商業、不動産で日本の投資も増えており、日中合弁は50件以上となっている。電子、電気、服装(子供服)等がある。
  • 普陀区も投資環境が整い、日本からの投資を歓迎する。
  • 多度津町とは、各分野において友好関係を持っている。

普陀区人民政府 曹 福星 氏

「普陀区対外貿易の概要について」

  • 対外貿易については、1980年の改革開放以来、外国からの投資を歓迎し、発展して来た。
  • 1994年には、25002,500万ドルの輸出入総額であった。対外貿易貿易公司の数字で見ると、2億人民元の輸出入である。
  • 日本への輸出は服装、機械等で500万ドル。
  • 外資誘致は330件あった。昨年までの総投資額は5.15億ドルである。

8月27日
 
上海から蘇州へ移動。到着後輪タクに分乗して、蘇州市内を視察し、観光地である「網師園」も見学した。地元テレビの取材もあり、その歓迎ぶりに驚かされた。
 昼食には、王浩氏の個人経営の小小大酒店にて日中飲食技術交流を行った。日本側は「えび」「野菜」の「天ぷら」「うどん焼き」をそれぞれ作って、中華メニューに折り込み試食して頂いた。飲食技術交流は思いの他好評を得た。食文化は人間の衣食住の重要な要素の一つとして今回の「食」の交流は、日本文化の一片でも中国側に紹介出来、有意義なものとなった。
 午後からは観光地である「虎丘」「寒山寺」と視察後、蘇州対外友好協会へ表敬訪問をした。外商投資管理弁公室王偉林副主任の歓迎の挨拶の後、第2回目の全体会議として同氏を講師に、「蘇州市の概要と対外投資状況」について話しをうかがった。対外投資の受け入れについては、非常に積極的なものがあり、15業種の業種にわたる実績があるとの説明があった。また日本側は、日本の高度成長時代から今日に至る国際化社会の経緯と、香川県多度津町の概要を説明し、研修会」(意見交換)を行った。
 研修終了後は場所を南園飯店に移して、蘇州市副市長の汪國興氏を始め、人民政府の関係者並びに国営企業の方々と懇談会を開き、相互の親睦を深めた。
全体会議・研修内容の要旨
蘇州市外商投資管理弁公室 王 偉林 氏

「蘇州対外貿易の概要について」

  • 対外実投資額3.1億ドルで330件。内、日本からの投資件数は50件で3千2百万ドルの投資額である。業種別に見ると14〜15種類あり、代表的なもので服装、工芸、木製品、紙、文具、電子、電気、機
    関係も今後見込まれる。
  • 主な企業としてはオムロン、郡普合弁企業(機械製造)サンヨー、日立の部品製造で、100%日本へ輸出している。
  • 第3次産業では大阪城という娯楽専科があり、客の利用度も利益も高い。
  • 積極的に経済交流を持ちたい。

8月28日
 早朝に蘇州市内の市場を視察後、胥口人民政府への表敬訪問を行った胥口鎮委員会張阿土書記の歓迎の挨拶の後、胥口開発区への対外投資概況の説明をうかがい、多度津にも工場を持つ、「ワイケーエス」企業の進出予定地を視察した。また国家的プロジエクトとして着実進行中の大湖開発区も視察し、その壮大な計画には目を見張るものがある。
 午後からは蘇州市にて日中合弁会社を設立し創業している「ソーデック」を訪問して、合弁設立に至る過程等の話しをうかがい、合わせて工場内を見せて頂いた。よく整理整頓された工場内は日本の工場と全く変わりなく、従業員ものびのびと仕事に従事していた。
 蘇州からは汽車による移動で、夕立による雷雨の中、上海に向かった。
全体会議・研修内容の要旨
中共呉縣市胥口鎮委員会 張 阿土 氏

「胥口対外投資環境の概要について」

  • 人口3万人。鎮経営120社。投資環境も整っている。
  • 交通の便が良い。太湖にも一番近い。
  • 国家的プロジェクトとして、太湖、胥口のレジャー開発に取り組んでいる。
  • 太湖のほとりへの投資については、工業、商業、サービス、また観光業の進出でもよい。鎮との合弁で利益も期待出来る。
  • これまでの投資については、台湾、日本、香港と皆良い実績が上がっている。
  • 龍華服装工業は、1年間で1千万元、労働者1千人の規模で、年内投資の年内創業の年内利益となった。
  • 昨年は、サンヨーが増資し、液晶による標示板の生産基地として、現在新たに工場を拡張している。
  • 人との人間関係が重要であり、どこの国のどの企業であっても、全力を尽して支援する。

視察研修内容の要旨
ソーディック 三光 氏

「合弁設立と事業概要について」

  • 日本80%450万ドル、中国20%の出資による合弁企業。敷地1万m2、工場6千m2
  • 中国で日本式のTカット機械の製造を目的して進出。
  • 従業員100名、日本からは6〜8名で指導にあたっている。
  • 日本では18億円、約30%のシェアを持つ。
  • 韓国にも合弁会社を持っており、今回中国が出来たことによって、生産拠点は海外生産にシフトした。
  • 年間生産高700台、月50台の生産高で中国国内では生産高、輸出高ともに1番多い。
  • 製品は全て日本へ送っている。70%以上の輸出があれば、利益が出ても2年間は免税となる。
  • 原材料は日本から調達している。現地調達はまだまだ大変である。しかし、他の進出している合弁会社から、まれに必要とする材料をとることがある。
  • 従業員は交代で日本で研修をしている。
  • 給料は、年間で1〜1.2万元で、通常の労働者賃金約7千元から比べると良い収入である。
  • 組合活動は福祉面で交渉を持つ。
  • 独資進出であれば設立まで1年間の準備が必要であるが、合弁だと3ヶ月程度で手続き出来る。

8月29日
 本行程の最終日、疲れも見え始めていたが、かねてより希望していた飲茶料理の調理場を視察するために、皆とは別行動をとり、普陀区飲食公司張総経理のご好意により第2部の技術交流として、短時間ではあったが厨房内での技術研修をすることが出来、当初の目的を達成することが出来た。その後、観光地である玉仏寺で合流して寺内を見学、白玉の釈迦仏の美しさに感嘆した。
 玉仏寺を最後に、4泊5日の日中経済交流使節団視察行程を終了して、午後2時30分上海を後した。上述してきた通り、日程的にもハードスケジュールであったが、計画通りの充実した研修の成果をお土産に、9時48分無事、多度津に帰町した。