(2)「自虐教科書」はどこから来たのでしょう

 「自虐教科書」の内容については、次の表題で指摘していますので、まず現状から知りたい方は「教科書の現状について」を先に読んで下さい。

 自国の歴史を貶める(おとしめる)自虐教科書が子供たちに与える影響が少ないのなら、これほど話題にはなりません。高橋史郎氏は「自分を尊重できない人間に、他人を尊重できるはずがない」、また「自国を尊重できない人間に、他国を尊重できるはずがない」と述べられています(新しい教科書をつくる会 第11回シンポジウムビデオ)。そして自虐教科書といじめの問題の関連性を論証し、「自虐教育」に対して「自己尊重教育」が必要だと論じておられます(後述)。その論旨に立ち、子供を中心に据えて、教科書問題を捉えていきたいと思います。

 では教科書を通じた占領政策とはどういうものだったのでしょうか。高橋氏は、ワシントンで発見した米軍の占領文書から、「教科書検閲の基準」についてこう述べています。

 

占領軍が日本人の精神的武装解除を推し進める上で、・・・愛国心、国家理想が破砕され、さらに占領検閲によってこの国体破壊施策が教育界に徹底的に浸透させられていった。昭和二十一年二月四日に「教科書検閲の基準」が定められ、以下の記述は削除された。@天皇に関する用語(・・現人神・・など)、A国家的拡張に関する用語(八紘一宇・・など)、B愛国心につながる用語(国体、国家、国民・・など)、C日本国の神話の起源や、楠木正成のような英雄および道義的人物としての皇族・・・等々。戦後世代の若者が天皇や国家、歴史的英雄などから切り離され、日本人としての誇りを失った背景にはこのような占領政策があった・・・(『検証戦後教育』)

 教科書ではそういうことが行われ、全体には「ウォーギルト・インフォメーション・プログラム(戦争犯罪洗脳計画)」が行われて、日本人から国家意識と誇りを削ぎ落としました。「アメリカと日本の対立」から、「日本の軍国主義者と国民」との対立に置き換えたのです。その結果国民の意識はすっかり変化してしまいました。『おじいちゃん戦争のことを教えて』(中條高徳著)より、そのときのことを紹介します。

故郷に帰ろうとして、価値の大転換にぶつかった。・・汽車はデッキや窓から人が溢れ出るほどの大混雑だ。そこに乗り込もうとして、私は罵声を浴びた。「あいつらは戦犯だ!」「お前たちのような軍国主義者のおかげで、おれたちは苦労しなければならないのだ」「戦争犯罪人が一人前に汽車に乗ったりするな。歩いて行け!」・・ついこの前までは、国を守るために命を捧げようとしている若者として、尊敬の目で見られていたのだ。それがこの落差。おじいちゃんは沈黙して、屈辱にただ唇をかむしかなかった。

『さらにマルクス主義の階級史観と「東京裁判史観」とが「日本国家の否定」という共通項を媒介にして合体し、先の洗脳工作に拍車をかけた。』(『検証戦後教育』)という次第で、現在の自虐の歴史観ができあがったのです。

 教科書の問題を扱ったこの本の中には、慣れない人にとっては過激に聞こえる言葉が続く場合があります。残酷な写真もこれから出てきます。しかし、それらは今、子供達にしっかり教えられている可能性が高いのです。読者は左右のイデオロギーに何の興味を持ってこなかった人がほとんどだと思います。著者もそうです。しかし今大人が、自虐教科書から子供達を守らなければならない時なのです。目を見開いて現実を確認してください。我々に必要なのは、強い信念と常識です。筆者の文章の中には、まるでアメリカに復讐するとでも思われかねないほど、「アメリカ」がたくさん出てきます。著者が問題にしているのは自虐の歴史から抜け出せない日本人自身です。また共産主義を忌み嫌う、「反共」かと間違われるかもしれませんが、目的実現のための手段を選び、至極穏当なものでさえ在れば否定しません。
 では
占領政策をもうしばらく見ていきましょう。

【目次】 【次へ】