センタースプリングのバネレート&セット長と

トルクカム(初級編)について



当サイトは2009/1/1より下記URLへ移転致しました。

今後はそちらにて更新を行いますので、お気に入り等の変更等をお願い致します。

※現在ご覧の旧ページは予告無く削除する場合がありますのでご了承下さい。

http://www.neginoleader.com


※注意!!

このコンテンツが私個人としての現在(2008年3月)の最新理論ですので、「駆動系の基本」の

「シーブ(トルクカム)&センタースプリングについて」の項目の内容は全て忘れて下さいませ。

アチラにも注釈を付けておりますが、7〜8年前のかなり古い認識になっていますので、今思うと

恥ずかしいですがアチラは間違いと言う事でお願い致します。

(頃合を見て「基本コンテンツ」も書き直しますので)


さてさて。今回はちょっと趣向を変えて、センタースプリングのお話等をしたいと思います。

あ、これはトルクカムの作用とも切り離しては考えられないので、加速側だけですがトルクカムについても

「初級編」って事でさらっとお話しておきます。

トルクカムについてもっと小難しい事はまたの機会に、って事で。


※書いた私も嫌になる程無茶苦茶長いので簡単にページ内の目次リンク張っておきますね。



・センタースプリング強化の不要性


と、いきなりですが、私は基本的に「多少のチューンではセンタースプリングの強化など無駄」だと

考えているのは皆さんもご存知かと思いますが。

これはトルクカム等との密接な関係があるのでもちろん一概には言えない事なのですが、少なくとも


「センタースプリング強化の必要性を感じた上で変更しないと

無駄な強化はパワーロス&耐久性低下を引き起こすだけのデチューン」


だとは断言出来ますよ。


これまたいつもの論法になりますが…

「何故にノーマル、もしくは現在のセンタースプリングから強化する必要があるのか」

が自分で分からないと、全く意味が無い事は言うまでもありません。


そして、この件は後々トルクカムの根本的特性のコンテンツにて合わせてご説明するつもりですが、

スクーターの駆動系セッティング、もしくは構成と言う物は、


「阿呆の様にセンタースプリングを強化しないとまともに走らないのであれば

100%の確立で駆動系の構成、作り方がおかしい」


と言う事なんですよ(笑

私に言わせれば、センタースプリングなんか駆動系のおまけみたいな物で、それ単体で変速特性をどうこうと

いじくる物では無いんですね。

センタースプリングの一番大事な仕事は、「最大変速状態において、ドリブン側でのベルトを挟む力が

そのエンジンに対し最低限稼げれば良い」と言う事です。

これはもちろん「トルクカムの効き」というベルトを挟む力や、ドライブ側でベルトを引っ張る力とのバランスとが

一番大事なので、簡単に見極められる物ではありませんが…

基本的にはトルクカム溝角度との兼ね合いを第一に考えてセットするのが最善手だと思っていますよ。

私の持論である、「トルクカム溝が寝ていてなおかつセンタースプリングも強いと、変速中のベルトを挟む力が

強大になりすぎる」って事に繋がりますから、ね。



・セット長・反力の解説とホンダ純正のバネレート計測値


とまあ、私は現在においては以上の様なチューニング理論を持っている訳ですが。

「スクーターレース」でも多少触れていますが、基本的にホンダスクーターの駆動系+ノーマルセンタースプリングは

かなり固めの物がセットされていると言う事は周知の事実だと思います。

とはいっても、前半45度溝のトルクカムである純正やクレアカムを使っている限りは、よほどの事が

無い限りは社外強化品に頼る必要は無いですね。

…これはヤマハでもスズキでも基本的には同じなのですが、あえて今回ホンダのみに的を絞って

考えてみる事にしましょう。


といっても「バネが強すぎる」事に対する定義は簡単で、ここで大事になるのは表題通り「バネレート」です。

これはスプリングが何kgの力を与えれば1o縮むか、という数値で表されていますね。

車のスプリングメーカーではありませんが、「kgf/mm」です(笑


ちなみにセンタースプリングは「直巻き」のバネなので、どの位スプリングが縮んでいたとしても、

そこから1o縮めるのに必要な力は最初の「セット長」にかかわらず同じになります。

仮に、バネレートが「5kgf/mm」のセンタースプリングがあったとしましょう。

要は、負荷が0の完全フリーな状態からから10o縮めた状態でも、もしくは50o縮めた状態でも、どちらも


「そこから1o縮めるのには"さらに"5kgの荷重を掛ければ良い」


と言う事なんです。


で、基本はこうなりますが…勘違いしないで頂きたいのは、スプリングには「反力」という物がありまして。

これはどういう事かと言いますと、多少でもプリロードをかけた状態であれば、「それ以上」にスプリングを

縮めようとした場合、「単純にレート換算の力を加えただけでは思う様に縮まない」んです。

分かりやすくご説明しますと…


「5kgf/mm」のレートのスプリングを、「10o」縮めたとしますよね?

この場合、「5x10=50」で、10o縮んだ状態のスプリングの「反力」「50kg」になっています。

すなわち、自由長より10o短いセット長とした場合、その状態で無荷重の状態であれば

「50kgの力でバネが押し返している」

と言う事ですね。


なので、ここから1o縮めようと思って「5kg」の力を掛けた所で、スプリングが1o縮むかといえばそうではありません。

ここから1o縮めようとすれば、10o分のスプリング圧縮状態での「バネの反力=50kg」に加えて、

「さらに5kg」の力が必要です。

5kgf/mmのレートのスプリングを10o縮めた状態からさらに1o縮めたいのであれば、

「セット状態の反力50kg」+「1o縮める為に必要なレート値の5kg」=「55kg」

の「力」もしくは「荷重」が必要になるんです。

スプリングという物はセット長=自由長ではない場合がほとんどなので、この点を間違えると訳が分からなく

なってしまいますのでご注意下さいませ。

私がご説明するよりも検索した方が分かりやすいとは思いますが(笑


とまあ、ちょっとややこしいかもしれませんが、バネを語るのであればこの位は最低限必要な事なので

ご容赦下さい。

…センタースプリングにんなもん大して関係無いだろと言われそうですけど、一応って事で(笑



ではでは。上記のバネの基本を踏まえた上で、ホンダの純正のセンタースプリングのレート計測値を

ざっとご紹介しましょう。


まずは「自由長」ですが、各種スプリングはこんな感じです。

もちろん劣化や誤差もあるかと思いますので、ある程度の目安にして下さい。

…ちなみにここでコンマ1oにこだわっても意味の無い事ですから、ね(笑


Dio(小豆色)95.5o
DJ-1(水色)94.5o
ジャイロX(緑)87o
ジョルノクレア(紫)79o
4stジョルノクレア(素地)85o
デイトナ青(ノーマルレート)95o
デイトナ赤(20%)92o


とりあえず代表的な物を挙げてみました。

…下の2つはとりあえずそのへんで目に付いた物ですが、私がこんなの使わないって事は皆さんが一番良く

ご存知かとは思いますがたまたま何時買ったのかも忘れた新品が転がってたので(笑


ちなみに見た目でご紹介しますと…

各種純正センタースプリング


左からジョルノクレア(紫)、4stジョルノクレア(素地)、ジャイロX(緑)、DJ-1(水色)、Dio(小豆色)となります。

ちなみにジョルノクレア(紫)より4stジョルノクレア(素)の方が自由長が長いです。

あ、社外品2つはどーでも良いので写真無し…と言うか色とパッケージで判断って事で(笑


では早速これらのレートを公開したいと思いますが、その前にもう一つだけ。

前述しましたが、センタースプリングと言う物は…どんな物でも「縮められた状態」でドリブンユニットに

装着されている物ですね。

なので、ハナから「セット長」が短くなっていて、実際の働きの場合はそこからさらに圧縮される物です。

この「セット長」と最大に荷重が掛かった状態、機械的なフルストロークの状態を定義しておきましょう。


いつもの下手絵ですとこんな感じですが↓


センタースプリングストローク長



一つの例として、ホンダ大径3ピンドリブンの場合です。

純正スプリングシート等の厚みも考慮した上で、トルクカムピンを基点としての寸法になりますね。

目一杯お皿が閉まった状態ではセンタースプリング長は「44o」、開いた状態で「27.5o」です。

もちろん実際にベルトを掛けると、最小変速状態でもある程度はドリブン皿は開くので、図中にある様に

センタースプリングのセット長がぴったり44oかといえばそうではありませんね。

数o程度は初期セット長に対し+の荷重が掛かります。

そして最大変速状態でも、こんな風にトルクカムピンが溝のはじっこまでは行かない事が多いので、

あくまでこれは「最大ストローク」の数値となりますね。

その理論上の最大ストローク、「16.5o」が、センタースプリングの「圧縮率」とも言うべき

実用範囲内での縮み具合、という解釈になります。

(とはいっても実際はプーリーのスライド量=ドリブンの開く量はノーマルで11o程度なので実用的にはそれも

加味します)


では、それを念頭に置いた上で、各種センタースプリングの「荷重を掛けた状態の反力」の計測数値をどうぞ。


47o44o40o37o35.7o31.5o27.5o自由長-10o時
(÷10で参考バネレート値)
Dio(小豆色)26.5kg29kg31kg33kg34.2kg37.3kg40.5kg6kg (0.6kgf/mm)
DJ-1(水色)24.5kg28.5kg31.2kg33kg34.2kg37kg40kg5.5kg (0.55kgf/mm)
ジャイロX(緑)19.4kg23.2kg25.4kg27.5kg29kg32kg35kg5kg (0.5kgf/mm)
ジョルノクレア(紫)17.5kg19.5kg22kg24kg25.2kg28.4kg31kg5.2kg (0.52kgf/mm)
4stジョルノクレア(素地)17kg19kg21.2kg22.8kg23kg25.4kg28kg5kg (0.5kgf/mm)
デイトナ青(ノーマル)27.2kg30kg32kg34kg34.8kg37.4kg40.5kg5.5kg (0.55kgf/mm)
デイトナ赤(20%)37.7kg40kg43.5kg47kg48.5kg53.2kg57kg8kg (0.8kgf/mm)



と、おおまかではありますが、各スプリングのバネレート計測地値はこんな感じになりました。

もちろん各数値共、何度か計測した上での平均値を取っています。

…各スプリングの硬さ具合へのツッコミはまずおいときまして、一応の計測方法なんかもご紹介

しておきますね(汗


センタースプリング測定 ボール盤と体重計を活用した計測ですが何か(笑

理論…なんて物ではありませんが、理屈はもう見たまんまですね。

スプリングストローク値はデジノギやダイヤルゲージを駆使し計測で、それなりの精度は出せています。

本当はデジタルな体重計が良いのでしょうが、そこまで「計測数値」にこだわっても実際のチューニングではその数値を生かせない事が分かってるのでこれで上等という説が(略



こんな感じの計測ですが、実際にはかなり微細な反力変化も数値として出ますのでなかなかアテに出来ますね。


ではでは…早速上記の数値に対してのツッコミなんですがおおむね各センタースプリングのバネレートは

一般的に体感で硬い柔いと言われている通りの順番になっています。


でもこれだけでは他の車種のセンタースプリングを知らないと比べようが無いので、

一つの例えでヤマハ3YK型JOGZRの物を例に出しますと…

・自由長 100o

・最小変速時 44o=20kgf/o

・最大変速時 31o=25kgf/o

・バネレート 0.4kgf/o

といった計測結果となっています。


…いかがでしょうか?

エンジンパワー的にはほぼ同一であるDio系のあずき色スプリングと比べても、幸いにもセット長が

同じなので分かり易いと思いますよ。

44oまで縮めた状態、発進時センタースプリングがベルトを挟む力ともいえるこの状態での

スプリングの「反力」は、あずき色のスプリングと比べて実に9kgf/oの差、JOG基準だと実に45%も硬い

言う事になりますね。


もちろん実際に「ベルトを挟む力」はセンタースプリングの反力のみならず、「トルクカムの効き」も

かなり影響して来るのですが、これは両者とも最小変速辺りでのトルクカムの位置では

溝角度は「45°」なので、各部寸法による多少の差異はあれど、トルクカムの効きは同等として考えます。

(実際にはトルクカム溝が同じ角度でも、ベルトの「かかり径」によっても「トルクカムが効く力」と言うのは

変わってきますがこれは難しいのでまたの機会に)


ちなみに、このあずき色Dioスプリングの反力はヤマハで例えると、

あのクソ硬いグランドアクシス用の青いやつよりまだ硬いですからね?(爆

…本来ニ種に使う様なレートの物が一種に使われている、と言うのは何故かと言う事ですが、

これは後述します。



そして、スプリングストロークは違いますがドリブンが一杯まで開いたと仮定した状態、すなわち

「最大変速状態」でのスプリングの反力、ベルトを挟む力ですが…

コレに関してはさらなる差があり、スプリングの最初のセット長はもちろん同一ですが、スプリングの特性や

セット長〜最大ストローク時までの縮み具合により、「バネレート値以上に反力が強くなる&弱くなる」事が

多々あります。

これも上記の計測結果で、DJ-1用と4stクレア用を比べてみると…実際の「バネレート」ではわずかな差しか

ありませんが、最大変速時の「反力」においては実に11kgf/oの差、43%も硬くなっていますね。

なので、スプリングの「レート」のみで強い弱いを判断するのは全く意味の無い事で、

実際に使用する状態にて「反力」をデータとして取らなければ全く無意味、だという事を

覚えておかれると良いかと思います。

これはフロントフォーク等のスプリングもしかり、ですね。


…ここでざくっと突っ込んでおきますが、「デイトナ20%UP」の物はすでにアレですが(笑

バネレートだけを見るとDio用あずき色が0.6kgf/oなのに対し、0.8kgf/oなので、まあ20%UPってのは

120歩位譲れば許容範囲だと思えない事も無いですが。

実際の「セット長=44o圧縮時」においてはノーマル比38%UPで、「最大変速時=27.5o圧縮時」には

ノーマル比で実に41%のUPとなっています。

…そりゃ別に商品説明としては「20%のレートUP」でも構わんと思いますが、いくらなんでもこんなモンは

どの様な時に利用するのか開発者に問い詰めたいですよ。

D車からホンダ縦型120ccKITとかが製品として出ているのであれば分からなくもないですが…

子供騙しでなけれ…おっとこれ以上は暗殺されるとまずいので(以下略


ちなみに、ヤマハ系ですとホンダ系の様に素直では無く、自由長やレートはもちろん線径等までかなり

違っているので、余計にちゃんとデータを取っておかないと流用は難しいんですよ。

(ヤマハは結構前に加工品が素晴らしいのが特徴の某有名所さんが計測されてましたね)



・ドリブンでベルトを挟む力と反力の関係性


と。簡単にセンタースプリングのレート関係のお話を終えた所で…ついでにトルクカム溝との関係、

すなわち「ベルトを挟む力」についてもお話しておきましょう。

上でもちょろっと触れましたが、特にDio系のセンタースプリングに「硬い」物が採用されているのは

そのノーマルトルクカムの溝形状に原因があるんですね。

と言いますか、原因と言うよりはメーカーがそう考えてバランスを取っている、と言う事です。


まず、最大変速時にはセンタースプリングはかなり縮み、その「反力」はかなり強くなり、その分ベルトを

挟む力も強くなる訳ですが。

基本的にトルクカム溝角度と言う物は、


溝が寝ていれば寝ている程、「効きが強くなりベルトを挟む力が大きくなる」

溝が立っていれば立っている程、「効きが弱くなりベルトを挟む力が小さくなる」


と言うのが大きな基本になります。

これはテストに出ますので絶対暗記しておいて下さいね。


ここでまず、ヤマハの一例として…「3AA」を出してみます。

これの溝角度は「前半45°&後半60°」になりますね。

このトルクカムだと…変速前半は45°溝というトルクカムの効く力が最大になっていますが、

変速後半に差し掛かると、溝は多少立ってくるのでトルクカムの効きは弱くなります。

が、ここで大事なのは、


「変速が進むにつれセンタースプリングはどんどん縮んでいき、反力が大きくなる」


と言う事なんです。

前半45°溝を使っている変速時にはさほどセンタースプリングも縮んでおらず、反力も低いですが

後半60°溝に変速が差し掛かる頃には、センタースプリングはかなり縮んでおり反力も高くなります。

ここが重要なポイントで…変速前半ではトルクカムの効きは最大ですがセンタースプリングの反力は弱く、

変速後半ではトルクカムの効きが弱くなる反面、センタースプリングは縮んでかなりの反力を生み出します。


この、

「トルクカムの溝角度によるベルトを挟む力」

「センタースプリングが縮んで行くにつれ増大する反力」

の両者の力関係こそが、トルクカム溝角度とセンタースプリングのレート&反力の「バランス」なんですね。


基本的には、停止状態から発進するという「0発進」の状態こそが、一番「力」が必要な所ですよね。

なので、トルクカム溝は各メーカーでほぼ例外なく、最大にトルクカムを効かせる様に45°といった

溝角度になっています。

(※各メーカーと言うのはホンダ&ヤマハ&スズキと言う意味です)

50ccならば総重量130kg程度の物体を発進させるだけの力をリヤタイヤに伝えなければならないので

ドリブン側でベルトを挟み込む力は出来るだけ大きくしないといけないんですね。

…トルクカムの動作原理は、ピンに対する「負荷が大きければ大きい程強く効く」のはご存知の通りですよね?

なのでトルク感応型カム機構、「トルクカム」と言われるゆえんです(笑


そして変速後半になると、発進時程には走行抵抗(リヤタイヤの負荷)が高くない、弱まってくるので、

トルクカムの効きは発進時(45°)程は必要とせず、「ベルトを挟む力」はセンタースプリングの反力と

立ち気味になる溝角度で十分補えるLVになってくる「力関係のバランス」になっているんですね。

(変速が進むにつれ、エンジン出力は一定ですが変速していくので、ドライブ側プーリーが

ドリブン側に掛けていく力はどんどん減るので、走行抵抗以外にこの力が減っていくと言うのも

加味すべきですね)



ここでやっとホンダのトルクカムを例に出しますが。

基本的な溝角度は「前半45°&後半90°」になっています。

これは一目瞭然ですが、後半溝角度が「90°」だと、「トルクカムの効きは一切発生しない」んですよ。

と言う事は…先程の3AAと同じく、変速前半はまだ良いのですが、後半溝に変速が入った瞬間、トルクカムの

「効き」は0になってしまい、いくら変速負荷が少なくなっている速度域とはいえ、「ベルトを挟む力」は

センタースプリングの反力のみで稼ぎ出さなければならないからなんですね…

ここまでご説明しますと、何故にホンダのあずき色が異常に硬いのかはもうお分かりかと思います。

あ、ちなみにジョルノクレアとかだとFNマシンの解説でも出してます様に、ホンダもちゃんとバランスを取った上で

パーツを採用していますよ。中にはジャイロXみたいにちょっと?って構成の物もありますが(笑


ですがホンダの場合、これを見越して強くされているセンタースプリングでも、巷で言われる様に

前半溝から後半溝への変速の移行の瞬間には、いくらか変速回転数が落ち込んでしまいますよね。

これは、私に言わせると変速のバランスが悪い、駆動系構成が悪い、といった感じでずばっと切り捨てられます。

前半溝45°+あずき色スプリングの組み合わせは、発進〜中速域までの「ベルトを挟む力のバランス」が

強すぎてしまい回転先行気味、なおかつ変速後半の中高速域ではトルクカムのおかげでセンタースプリングの

反力がまだ足らず、「変速回転数は絶対に一定でなければならない」という無段変速の基本理論からも

外れてしまっていますね。


これをホンダのデチューンと言うのは簡単ですが…別にコレ、正直な話デチューンでも何でも無いんです。

ホンダ駆動系&トルクカムの45°溝が「終わる」速度域と言うのは、車種により多少の差はあれど

「約35km/h」程度なんですよ(笑

…「原付一種」の法定最高速度って何km/hでしたっけね??

坂道走行や体重の重い人向けの「余裕」を持たせていたとしても、「変速後半」なんて物は製品上では

全く必要無い物だ、という…たったこれだけの話なんですよ。

(※参考までに「変速が終わる」のは約55km/h程度で、よくこの辺りに変速の「谷」があるという意見も

耳にしますが、ここまで来るとすでに変速なんか終わっちゃってますのでお間違え無き様に)


ちなみに何でこのスプリングを採用したのかと言えば…おそらくですが、Dio系よりも以前の車両、

「ビート」に採用されていた物だったので単純なコストダウンの一環…だと踏んでいますよ。

DJ-1RR以降の車種はほぼビートと同じスプリングですし、わざわざ作らなかっただけだと(以下略


後、これはまたの機会にお話しますが、「変速回転数より低い回転で、40km/hで巡航したい」といった、

アクセルOFFでのシフトアップ作用を使った「高速側変速固定+規定変速回転数以下での巡航」の場合には

トルクカムの効きが無いので坂道等には弱くなりますが、それでも坂で30km/h程度は最低限出るといった

駆動系構成としてホンダさんは作っている様なので「さほど」問題は無いですから、ね。

…これを文章だけで理解出来る方がいらっしゃいましたら是非ご一報頂きたく思いますが(汗



・2種車両のセンタースプリングの話


と、これでヤマハとホンダの違いの様な物がある程度お分かり頂けたかと思いますが…

ヤマハの場合、トルクカムを変速後半でもある程度効かせているので、センタースプリングは

そこまで強い物は選んでいない、と言う事です。

上でちょろっと触れましたが、ヤマハは2種LVになって初めてセンタースプリングもホンダに近い物を

使っています。

が、これでも車重があるから負荷がでかい=センタースプリングも強い、という理由ではありませんよ?

2種は重い代わりにエンジンパワーも増大していますから、トルクカムの「効き」は、溝角度が同じであっても

「強くなる」んですよ。

すなわちエンジンパワーでトルクカムの効く力を+に補えるワケで…センタースプリングの極端な強化ってのは

これでもまだ必要無いLVなんです。


逆に、ライブDio-ZXなんか1種ですけど、45°溝部分とあずき色スプリングセットでは、発進〜変速前半までの

ドリブン側でベルトを挟む力は車重や負荷に対してもノーマルでかなりオーバーパワーになってたりしますからね。

ノーマルですでにオーバー気味な力=パワーロスがあるのに、さらにその力を強めてもメリットなんかありません。


じゃあなんでアクシス90やグランドアクシス等は50系に比べても明確に硬いんだ?と思われるかと思いますが。

ずばり、これはたった一言でケリをつけましょう。

それは…




「タンデムを前提としているから」




たったこれだけ、この理由が9割方だと思います。

もちろん、「乗車定員2人」ってなってる車種であれば、一人乗りに比べて極端に負荷が大きくなるので

その分、「ベルトを挟む力」ってのは強くしてやらないといけませんよね。

かといって…トルクカムの効く力を増大させてベルトを挟む力を増やすには、トルクカムの溝はもう45°以上

寝かし様がありませんし、エンジン出力を上げれば良いのですがそれは色々難しいですし…

結局、センタースプリングを「仕方なく強化して」ベルトを挟む力を稼ぐしか無いんですよ。


もっと分かりやすい一例として、JOGの90とアクシス90のセンタースプリングを比べると良く分かりますね。

これはアクシス90は初期型だけですが、JOG90よりもかなり硬いセンタースプリングが採用されています。

アクシス90後のモデルではセンタースプリングが弱くなっていますが、トルクカムの変更や耐久性等の問題で

何か理由があったのだと思いますが、私90は専門でない上にそこまでは分析進んでませんので

一つの例えと言う事でご容赦をば(汗

後、アドレスVチューンとアドレスV100でも似た様な事が言えますね。

これは車格が同じでもエンジンと乗車定員が違うのでアレですが、理屈は同じ方向性で考えられています。

ホンダだとリードの50と90を出しておきますがもう(以下略


…これ言っちゃうと敵を作りそうですが、タンデム可能な2種ベースのライトチューンでいきなりセンタースプリングの

強化を行うのはかなりの愚策だと私は思っています(笑

むしろ、タンデムしないのであれば弱体化させた方がバランス良くなりますからね。

こればかりは色々な車種と駆動系構成等を知り、その上で「ノーマルの構成に対する理解と疑問」を

解決しておかないとかなり難しい着眼点ですが、私がいつも言っている通り、

「メーカーさんは馬鹿ではない」と言う事です。

…さすがに言葉が厳しくなりますが、メーカーの設計思想の酸いも甘いも噛み分けた上で無いと、

「チューニング」にてメーカー性能を上回る事なんて事実上不可能ですから、ね…



・社外品45°一直線溝トルクカムについて


ではここで…これはコンテンツで書くべきかどうか数年前からかなり悩んでいた件だったのですが、

良い機会なのでぶっちゃけてしまいましょうって事が一つあるのでさくっと書いておきます。

それは何かと言えば…「社外品の45°一直線溝のトルクカム」なんですが。

私はアドバイス等においてもこれの非推奨をしているのは皆さんご存知かと思いますが。

こういった特性の品だと、「常識的な駆動系構成」の車両に組み合わせて使うには


100%デメリットしかないゴミ


だと言い切ります。


…先程の、「変速が進む上でセンタースプリングが縮み、反力が増大気味になる」と言う理論にて、

すでに理屈がお分かりの方も多いと思いますが。

そうです。駆動系がノーマル風パッケージであれば、「前半溝はともかく後半溝まで45°」という構成では、

変速後半〜最大変速まではトルクカムの効きが最大に効かされつつ、センタースプリングの反力も加えて

「ドリブン側でベルトを挟む力がとんでもなく強大になっている」と言う事ですね。


すなわち、


「変速中は常に一定でなければならない変速回転数が、

変速後半で上昇してしまう」


と言う事に繋がるんですよ。

分りやすく言いますと、「変速後半で変速回転数が上昇する」のは、「ドリブン側でベルトを挟む力」が

変速前半に比べて変速後半で大きすぎ、ドライブ側で変速を進めるためにはエンジン回転数が高くならないと

「変速が進行しない」と言う事なんですね。


要は、45°一直線溝をぶちこんで、「変速前半部分」に対してWRで変速回転数をパワーバンド回転粋に

合わせたとしますよね?仮に7000rpmとします。

ところが…トルクカムとセンタースプリング反力のバランスの取れている変速前半は7000rpmで変速するものの、

後半溝…って後半溝がありませんが変速の後半に差し掛かると、ドライブ側のプーリー&ランプにてベルトを挟み

「ベルトをドライブ側に引く力」よりも「ドリブン側でベルトを挟み引く力」の方が大きくなっているんです。

となると…エンジン回転数はドライブ側の力がドリブン側の力に打ち勝つ所まで自動的に上昇します。

イコール、まだ変速中の状態なのに、エンジン回転数が上昇しつつ変速が進んでいくんですよ…

35km/hまでは7000rpmで変速しているのに、35km/hを越えた辺りからはどんどん回転数が上がり、

最大変速ちょい手前の55km/hの段階ではすでに8000rpmになり、パワーバンドを超えてしまっているという

状況になってきます。


こうなると駆動系の構成としては致命的で、発進と最高速付近以外は全てパワーバンド回転域に

収めて加速したい無段変速機構の根本から間違ったセッティング、と言いますか「駆動系構成」に

なってしまいますね。

余程パワーバンドの広いエンジンならばこれでも良いかもしれませんが、それでも上下どちらかには

変速回転数がパワーバンドから外れ気味になるセッティングになってしまいますからね。


・発進、最高速付近を除く「変速中の回転数」は常にほぼ一定であるべし


と言うのが駆動系の絶対的理論なので。

万一こうならない場合だと、駆動系の構成が無茶苦茶になっている事の証明にしかなりません(断言

200〜300rpm程度であれば許容範囲ですが、馬鹿みたいに変速後半が唸るだけで前に進まないというのは

何のメリットもありませんし、ドリブン側でベルトを挟む力も無駄に強大な為、ベルトの消耗も早くなります。



…正直な話、元々2段階溝の車種に対して45°一直線溝のトルクカム採用を考え出した人というのは、

駆動系の根本的な仕組みも理解していないのではないか、と勘ぐってしまいますよ。

某社の製品のトルクカムの解説なんか、てんで的外れな文章がカタログに掲載されてますし、ね…

確かにこの辺りは難しいとは思いますが、子供騙しで無いのであればもうちょっと考えるべきだろ、と

疑問を投げかけたい所ですね(笑



・「ベルト破断」と言われるモノについての一考


あ、ここでついでにもう一つ。

そのベルトの消耗ってやつですが…ドリブン側でベルトを挟む力が、必要以上に強大であれば

ベルトの寿命ってのはもちろん短くなりますよ。

これはただのゴムが数十kgの力で鉄板に挟まれ引っ張られ続けているのですから当然です。


よく、世間的には「ベルトが切れる、破断する」という症状が言われてますが。

これ、基本的には上記の理由により、


変速後半まで効きの強いトルクカムと過剰に硬いセンタースプリングの

組み合わせによる事が原因のほぼ99%を占めています(断言


私は「ベルトが破断した」事なんてストリート&レーサーを問わずただの一度もありませんし、もちろん

45°一直線溝のトルクカムなんて買ったことすらありません。

特にホンダ系はノーマル構成でも変速前半ではベルトを引っ張る力関係のバランスが少々おかしく、

ドリブン側には結構な負担が掛かっている物なので、よほどの事が無い限りはドリブン側での

ベルトを挟む力を強化する必要が無い、と言う事も大きいです。


その証拠に…同じ7.2psエンジンで駆動系の変速比等や使っている回転数もさほど変わらない、

3YK-JOG-ZR系とライブDio-ZXだと、走行距離が同じで使い方も同じ位だとすると、ライブの方が

はるかに「ベルトの減り」って速いんですよ。

もちろんコンマ何o程度の話ではありますが、0.5o減るのにヤマハは3000kmかかるのにホンダは

2000km、といった感じだと思って下さいませ。


で…私にベルト破断の経験が無いのは、「お前に2種130ccとかの大パワー車の経験がないからだろ」

言われそうなのでそれについても補足を少々。

これはですね、確かにエンジンパワーに対しても適正な「ベルトを挟む力」と言う物は設定しなければ

いけない物なのですが、上でご説明しましたが、エンジンパワーがあればトルクカム溝は同じ角度でも、

ドライブ側でベルトを引っ張る力も強くなるのでトルクカムの効きが強くなり、ドリブン側でベルトを挟む力

&引っ張る力は「増大する」んですよ?

となれば、ある程度はベルトを挟む力という物もトルクカムの効きによって増大するんです。

ならば、「必要以上にセンタースプリングを強くしなくともOKのバランスもある」と言う事と同意になりますね。

…逆に「パワーを過信し駆動系構成の間違いに気付かない」のは愚かですよ。


そもそも、250ccのスクーターでもゴムベルトですが、だからといって50cc用の5倍の幅と厚みがある訳では

ありませんよね。幅でもせいぜい4〜5o程度太いだけです。

仮に車重3倍パワー5倍だとしても、ベルトの強度が5倍にならないのであれば、新車から数千km程度でも

ベルトが切れないとおかしいでしょう?

メーカー側ではそうならない様に、ドライブ&ドリブン側双方での、変速中のベルトを挟む力&張る力を考慮して

「駆動系構成」を考えていると言う事です。

パワーや車重、走行負荷が大きいからベルトが早期に切れるってのは絶対ありえません。

(ドリブン側の開き方に見合わない超ハイスピードプーリーを使ったりしてベルト切れるってのは問題外ですよ)


さっきも書きましたが…変速後半にてドリブン側でベルトを挟む力が強大になると、変速回転数が自動的に

上がりますが、一定回転で変速すべき物のバランスをさらに崩す程の力、と言う物はかなりでかいんです。

仮に変速後半に回転数が1000rpmも向上してしまうと、これはもうドライブ&ドリブン双方でベルトを

引っ張り合う力が無茶苦茶なLVでの負荷になっており、ベルトなんかぶち切れて当たり前ですよ。


あ、もちろんいつも言ってる様に、粗悪品ベルトなんかは問題外ですけどね。

…勘違いしないで頂きたいのは、「純正=法定速度で走れば良い品質」、「社外=走れば良い品質」って感じですが

極度に安い粗悪品だと、「動けば、どころではなくエンジンかかればラッキー」みたいな品質だと

私は考えてますので。

そして製品公差が大きすぎて人様のインプレを全く当てに出来ないのも私がそういうのを好まない原因です。

「量産品なのに品質が全く安定しない」のでは「製品」ですらありません(断言



・スズキ車駆動系についての補足


何か今回社外品叩き?がいつもより多いですが…ここまで突っ込んでくると社外品の作りそのものも

悪い所はざっくり否定して行かないと話にならないのでご容赦下さいな。


そしてここまで頑張って読まれた方であれば、上記の「45°一直線トルクカム」に対して、「あれ?」と

疑問符を持たれる方もいらっしゃるかと思います。

「スズキ乗りの方」であれば、ね(笑


…基本的にスズキのトルクカム溝ってやつは、昔から45°一直線なんですよ。

これはホンダ&ヤマハ乗りの方だとびっくりするかもしれませんが、これが伝統なんです。

となれば…スズキ車のノーマルだと変速後半の負荷がかなりでかいのでは、といった疑問が

出てくるのは当然ですが…

これはですね、車種にもよりますがちゃんとそれに対応している部分があるんですよ。


分りやすくアドレスV100を一例に出しますが…この車種もタンデム前提なのでセンタースプリングが

かなり硬く、なおかつトルクカム溝も45°一直線になっています。

ですが…前述した「ベルトを挟みドライブ&ドリブンで引っぱる力」ってのは、ドリブン側は前述の

通りですが、ドライブ側でもWRがプーリーをスライドさせる事によって発生しています。

てか当然ですが(汗


「ドライブ側でベルトを挟む力」と言うのは、大まかに言いますと

「WRガイドとランププレートの傾斜」でほぼ決定されます。

これ、トルクカムが2段溝なのと同じで、プーリー&ランププレートでも、WRガイドがほぼ一直線の物や

逆に後半が立っている物、ランププレートでも昔のホンダの様に2段階に折れている物もあります。

かなり多種多様ではありますが、これもセンタースプリングとトルクカムの関係の様に、「バランス」を

取っている構成の一つなんですね。

この辺りの構成と、ドライブ&ドリブンにてベルトを挟む&引っ張る力のバランスという物が、私のいつも言っている

「究極的な意味での駆動系のバランス」と言う事でもあります。

…が、今回ご説明しますともうわけわかめになるのでこれもまたの機会に(笑


話を戻しまして…V100だと、ドリブン側構成は目一杯ベルトを挟む力を出す様になっていますが、

その反面…ランププレートの後半が反り返っているんですよ。

これはですね、ドリブン側でベルトを挟む力が増大しまくる変速後半にて、ドライブ側でベルトを挟み引く力、

要はWRでプーリーを押し出しベルトを挟む力を「強くする」方向性になっているんです。


これならば、変速後半ではドリブン側で「ベルトを挟む力」が増大されて行きますが、ドライブ側はWRにかかる

遠心力が同じでも、「プーリーを押し出す力」が増大していき、「結果的に変速回転数がさほど上がらなくても」、

ドリブン側でベルトを引っ張る力に打ち勝つ力を+させていくことが出来るんです。

(ランプが一直線の場合だと、ドライブ側がドリブン側の力に打ち勝つには自動的にエンジン回転が上がるまで

待つしかありません)


となると、ドリブン側でベルトを挟み引っ張る力が強いままでも、さらにドライブ側でベルトを強い力で引っ張り

エンジン回転数=変速回転数が上がらなくとも変速を進める事が出来、変速後半時にエンジン回転数が無駄に

上昇するのを「それなり」に抑えているシステムになっているんです。

この辺りがメーカーも馬鹿ではないと言う事なんですが…それでも個人的にはスズキ系の構成は

理想とは思えませんが(笑

前後ぱっつぱつな力関係をさらに促進させて、変速回転数の極度な上昇を抑えている訳ですからね。

その証拠に、V100だとトルクカムピンは負荷軽減の為に回転式になってますし、それでも

トルクカムの溝のある所がもげるってトラブルもノーマルでありますから…対策を施していても

やはりドリブン側はかなりのオーバーパワーなバランスである事は間違い無い様ですね。


スズキの補足で最後にもういっちょ。

くどいですが、各メーカー共に、「変速回転数は一定」と言うのは基本の設計思想になっています。

が、スズキ車のサービスマニュアルの「性能曲線図」を見れば分りますが…例の45°一直線トルクカムの作用で

「変速中の回転数はじわじわ上昇する」といったグラフに「元々」なっているんです。

これはスズキが狙ってやってるのかやむをえずやってるのかは分かりませんが、この辺りが「理想」とは

遠くなっている一環だと私は分析していますよ。


もう一つ例え話で、昔はスズキの50ccは、DioやJOGに対して同程度のチューンを施しても、「最高速が伸び悩む」と

いった世論と言いますか風潮があったんですよ。

これはある意味当然で、変速後半にてエンジン回転数を無駄に食われてしまう構成だと、「最大変速後」には

エンジン回転数の余裕がほとんど無くなり、もしくは完全にオーバーレブになってしまい、変速中に

ハイギヤ等で速度を載せておかないと、回転数での伸びは全く期待出来ないといったメーカー特性だったから、

という事なんですね。

…もちろん私も、この辺に気付くまでにはかなりの年月を要しましたが(笑



・トルクカム溝角度と高速域への影響


と言う訳で…特に変速後半から最大変速までの「高速域」に関しては、ドリブン側でベルトを挟む力が大きすぎると

「高速域の加速力」どころか、「最高速にまで影響を及ぼしてしまう」事がお分かり頂けたかと思います。

ぶっちゃけた話、ライトチューンもしくはノーマル程度の車両に45°一直線溝のトルクカムは鬼門です。

寝ている一直線溝の物だと、いくらセンタースプリングを弱い物でセッティングを行ったとしても、最高速は確実に

無駄にしている傾向になりますよ。

(社外品だと50°一直線溝とかもありますが、たった5°の違いですがかなりマシな傾向になる事もあります。

実は40°溝ってのも存在するんですが、詳細はまたの機会にしますが45°以下の物の場合はトルクカムの基本を

無視しきった溝角度なのでトルクカムとすら呼べません)


ちなみに、45°一直線溝でも最高速が落ちなかったという場合だと、元々最高速がスポイルされている原因が

どこかにあるはずですので。

…仮に、一番おいしいパワーバンド回転数が7000rpmのエンジンで、発進直後の変速は6000rpmで始め、

変速後半で回転の無駄喰いをしてしまい、最大変速状態にてやっとこさ正規のパワーバンドである7000rpmに

エンジン回転が落ち着き、そこまでの加速力はともかく7000rpmから上を最大変速後の「速度の伸び」に

使える様なセッティングであれば、「さほど」最高速のダウンも起こりえない訳ですが。


しかしその反面、変速前半では6000rpmと言う本来あまり力の出ない回転域を使って加速しているにも

関わらず、ノーマル風エンジンでもトルクカム45°溝の効果により多少パワーバンドを外れていても

ドリブン側ではがっつりとベルトを挟む力が稼げているので、さほど加速力そのものが低下する事には

ならない状況が起こる、と言う事なんですよ(笑

(とはいってもエンジン1回転で発生する力が同じだと仮定すれば、6000rpmより7000rpmで加速する方が

加速力は確実に上になりますけど)


…実際は、最大変速時にはWRの移動量等に余裕があるか無いか(プーリーのスライド量でフェイスと

接触しているか否か)と、ベルトのドリブン側食い込み量に余裕があるか無いかで、ドライブ&ドリブンでの

お互いの「ベルトを張る力」が変わり、変速終了直後の回転数は正常な値でも、そこからの速度の伸び具合と

言う物は変わって来ますが…


基本的には、



トルクカム後半溝が寝ていれば寝ている程


高速域の加速力と最高速までも無駄にしている



と、「100%断言」させて頂きますね。

これはセンタースプリングとの組み合わせもあるので、反力も不必要に高ければドリブン側での

ベルトを挟む力が強大になりすぎ、何のメリットも無いと言う事です。


正直、この辺りを体感のみで感じ取るのはかなり難しいのですが、本当に理想的に詰めたいのであれば

タコメーターが無いとベストセットはほぼ不可能に近いって事ですね。

…ここでまた敵を作るのを覚悟でモノを言いますが、0発進や再加速時のアクセルレスポンスやエンジン回転の

上昇具合、要は体感で「レスポンスが良い!」と感じる事を主眼としてセッティングを行っていると、

人間って不思議な物で、「気持ちの良さ」ばかりが先行して印象に残ってしまいますんで、その方向性に

一辺倒になってしまってセッティングを間違う事が「多々」あります。


回転のレスポンスが良い、駆動系の反応が良いのは気持ち良いモノですが


それは本当に
「前に進んでいますか?」


…実際に「セッティングが出ていて速い」ってのは「いかにエンジンパワーをロス無く前に進む力に変換しているか」

って事ですからね。

もちろん体感のみで満足する事を否定はしませんが、それで絶対的な性能がスポイルされている事もある、と

言う事です。

エンジンの特性によっては、アクセルON=ドカン!ではなく、ほんのわずかにワンテンポ遅れて

右手の動きに車速が乗ってくるセッティングの方が、実際の加速力や再加速力が高い場合もあるんですよ?

もちろんエンジンパワーが大きければ大きい程、駆動系構成のまずさによる加速力等の低下も

パワーで誤魔化せるので余計に体感しづらくなるのは定説です。


これについて個人的方向性を言わせて頂くと、前にもどっかで書きましたが私はサーキット車両や

レーサーでも、基本的にスピードメーターを除去しませんからね。…昔はよく馬鹿にされましたが(笑

発進点と目標点を決めて置き、そこまでで何km/h出ているとか、目標点まで○○km/hのまま巡航し、

そこからアクセルを開けて再加速、「次」の目標点までに何km/h出ているか、といった計測方法を

何よりも重んじています。

サーキットの周回でも同じ事で、タイムと自身の体感のみに頼っていては間違う事はあるんですよ。

練習走行でセッティングを「体感で」タイムが出るまで詰めておいても、いざ決勝レース中に競り合いとなって

再加速等で他車に置いていかれるのでは「体感で速いつもりだったセッティングを施した自分」に対して

情けなくなりますから、ね…_| ̄|○



・最後にまとめ等


と、実に9ヶ月をかけて書き上げたこのコンテンツ、いかがでしたでしょうか?

今回はかなり辛口と言いますかモノに対してはきっつい言い方をしてますが…

正直、ここまで言わないと一般的に誤解・曲解されているであろう事の修正にはならないと思ったからです。

これでも私は一般的な視点にて物事を分析しているスタンスですので、「何か」を贔屓していると言った事は

全く無い、と断言させて頂きますね。


そして今回、あまり画像や絵を使って理論を解説していない理由は、ココを読まれた方々の「イメージ」にて

各部の力関係やパーツの動き等を把握して頂きたいから、と言う狙いがあります。

正直な話、文章を読んで各部の構成に脳内変換し、その上で各部の動き&力を三次元的に理解しないと

駆動系とはかなり理解に苦しむモノなんですよ…

なのであえてこういった構成にしてみました。

出来る限り文章のみで分りやすく、なおかつ間違い等も無くして書き上げたつもりですので、

私の言葉からイメージを作り出し、その上で実物を見ながら&触りながら色々と考慮して頂きたく思います。


…でかい口を叩いているのは自覚していますが、これは「フルノーマルエンジンをいかに前に進ませるか」という

FNクラスマシンも長年研究してきた私の見解ですので、エンジンパワーの無駄遣いをいかに嫌うかと

言うチューニングの方向性、といった点では理論に自信がある事も覚えておいて頂きたいですよ。

あ、もちろんクレームはいつも通り大歓迎ですので是非私と楽しく議論して頂ける方を募集中です(笑



そして本当の最後の最後に、まとめ的な事を書き殴っておきます。

さすがにこのコンテンツ内容を一度読んだだけでは覚えられない事もあるかと思いますので。

端的ではありますが、下記の物から疑問が出た場合には改めて読み直して頂けると嬉しいですよ。



「スプリングの巻き数を気にするのは、線径とストロークを計算し線間密着があるか無いかを判断してから」

「セット長とフルストローク状態をちゃんと把握すれば考えても意味が無い場合もある」

「スプリング自体の巻き方向は二の次の把握で十分だと考えているので現在の所は言及するつもり無し」

「巻き方向は影響が無いとは考えないが他に比べれば微細なモノだと判断」


「ベルト破断は無駄なセンスプ強化と45度一直線トルクカムが原因の99%」

「GアクやV100はタンデム前提のセンスプの硬さに設定されている。まずはメーカーの設計思想を理解しないと

現状把握にはならずなんでもかんでも強化の方向性になりドツボにはまる」

「純正フルノーマルの駆動系構成でもエンジンパワーをロスに繋げている所があるモノは多い」


「縮めば縮む程反力の強くなるスプリング、これでトルクカムが最後まで45度で強烈に効きっ放しだと

ベルトを挟む力は強大になる一方で負担が無茶苦茶」

「45°を下回る溝角度だとアクセルOFFでシフトアップせずエンブレが掛かる。危険&無茶な負荷」


「ドリブン側のベルトを挟む力ばかり強くすると、ドライブ&ドリブン双方でベルトを張る力が強くなり、

発進時や再加速ででドン!とくる傾向になりやすいがこの感覚を速いと決め込んでセットを行うと

実際の速さに繋がらない状態に陥りやすい。要は空回り状態」


「スズキはトルクカム溝は45°一直線だか、ドリブンでベルトを挟み込む力の強さはランプ形状でフォローしている」

「変速前半はともかく、変速中盤から最大変速までの変速区間は、前半から45°よりトルクカム溝を立てるか、

途中で溝を立て始めるかしてセンスプの反力を逃がさないと大幅なパワーロスにしかならない。

しかも高速域の加速力〜最高速まで確実にロスしている」

「だが2段溝の構成はWRガイド形状やランプ角度の付き方等も考えなければならないのでかなり難しい」

「汎用性を高めるトルクカムとしては、一直線で溝の立っている物が無難」

「…個人的な理想のトルクカムは一直線溝でも2段階溝でも無かったりするがこれは秘密以下略」



※このコンテンツ、次回はトルクカムのお話も交えてもうちょっと突っ込んでみたいと思います。


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