クランクシャフト&ベアリングについての一考



当サイトは2009/1/1より下記URLへ移転致しました。

今後はそちらにて更新を行いますので、お気に入り等の変更等をお願い致します。

※現在ご覧の旧ページは予告無く削除する場合がありますのでご了承下さい。

http://www.neginoleader.com


今回は、クランクシャフト&クランクベアリングについての軽い考察などを行いたいと思います。

私、こういったバランスがどうこう…といった物については、専門的な知識があるワケでは無いので、あくまで参考としてお考え下さいね。


何故クランクシャフトの考察に至ったのかと言いますと…単純にホンダとヤマハの違い、といった物を具体的にご説明したかったからなんですよ。

皆様もご存知かと思われますが、ホンダエンジン(AF18、34系問わず)は縦型&横型、どちらも耐久性がヤマハに比べて劣りますよね。

壊れる原因としては「クランクベアリングの破損」が主な原因です。

もう20年落ち近いヤマハの縦型スクーターなら、今でも現役で走っているのを見かける事もありますが、同程度の年式のホンダスクーターはどちらかと言うと見かける確率が少ないですね。

単純にメーカーさんの基本設計の違いにより、後々の耐久性に違いが出ている可能性は拭えないと思いますので…


その中でも、私はクランクシャフトとベアリングの設計自体に原因があると思っています。

これはホンダスクーターをたくさん乗られている方でしたらお分かりかと思いますが、はっきり言ってJOG程パワーもスピードも出せない上に耐久性も無い、という…少なくとも「良い」エンジンではありませんよね。

それらを少し分析してみましょう。



まずクランクベアリングなのですが、ベアリングという物は「工業規格」という物があり、きちんとしたサイズ等の管理が行われているパーツなんですよ。

ベアリングが壊れたからといって、その辺のお店で手に入らないのではまずいですから。

しかしホンダスクーターに限りですが…ホンダのクランクベアリングは、そういった規格品では無く、自社設計の独自サイズを使用しているんですね。

(スズキ車は左側のみ特殊規格だった記憶もありますが…専門外なので(汗)


AF18縦置きエンジン系でのベアリング規格はパーツリストによると「6304」となっていますが、実際は全然そんな規格ではありません。

「6304」規格のベアリングは本来「外径52mm・内径20mm・厚さ15mm」なんですが、実際は「外径52mm・内径20mm・厚さ12mm」という「薄い」物が使われています。

ちなみにライブ系の横置きエンジン(初期型)では、縦型よりもさらに外径が4mmデカいと言う…異常に「縦長」なベアリングとなっていますね。


…ヤマハのクランクベアリングは、基本的にどの車種でも「6204」規格なんですよ。

(Gアクとかは「6205」の様ですが)

これは「外径47mm・内径20mm・厚さ14mm」という、普通の規格が使われています。

この規格だと、きちんとした工業規格品が流用出来るので、高性能なベアリングの選択の幅も大きいのですけれど…

(ホンダは基本的にクランクベアリングの流用は不可能ですので)

クランクベアリングはすさまじい負荷がかかり、なおかつ高速回転する物なので、ベアリング的には「出来るだけ外径と幅が近くなる寸法の物」が機械としては理想ですよね。

少なくともホンダベアリングは、幅が狭い上に縦長の傾向があるので、ヤマハ規格に比べると、回転性能や耐久性でかなり劣っているはずですね。


ではここで比較画像などを。


ベアリング比べ ちと写真がズレてますが、左からライブDio系、縦型Dio系、ヤマハJOG系のベアリングになります。

こうやって見るとサイズの違いが一目瞭然ですね。

「幅」が狭い分、ベアリングの「玉」もホンダは小さくなっています。

「内径」はどれも20mmと同一ですが、これはどう見てもヤマハ6204が一番ゴツそうですよね(笑



次に横から見た厚みの比較等を。


ベアリング比べその2 上と同じく、左からライブ(94〜96)、縦Dio系、JOG系です。

幅自体はホンダが12mm、ヤマハが14mmになっています。

…こうやって見ると、回転軸部分の軸受けとしては素敵過ぎるバランスだと言わざるをえませんよね_| ̄|○

こんな細く長い物体でクランクを支持しているんですよホンダって…(汗

私にはその狙いが全く分かりませんですよ。



とまあ、こういった感じでの寸法の違いがあるんですよね。

もう詳しくご説明する必要も無いと思われますが、何故ホンダのクランクベアリングの耐久性が低いかと言えば、基本的にこういうコトなんですよ・・・

もちろんクランクベアリング自体も「完全に真っ直ぐ」ケースに収まっている訳ではありませんし、クランクのブレやベアリングのクリアランスも手伝って、ベアリングが非常に破壊されやすいという事ですね。

(この辺りは質問掲示板の過去ログもご覧下さいね)

過去ログはコチラです



そして次に…クランクシャフトの構造からも追求を行ってみましょう。

まずは…何はともあれこの画像をご覧下さい↓

代表的なホンダクランクとヤマハクランクの比較です。


クランクシャフト比較 ええと…とりあえず左がホンダ縦型で右がヤマハ横型の物です。

画像上側がプーリー側、画像下側がフライホイール側になります。

モデルにより少々の差はありますが、基本的にホンダとヤマハの違いはこんな感じになっているんですね。

(ヤマハの物はクランクベアリングが挿さったままですが気にしないで下さい)



これを見て頂ければもはやご説明の必要すらありませんが…ホンダは本当に異常なバランスです。

さすがにどんな設計思想があるのか小一時間問い詰めてみたい気分ですよ(笑

そりゃクランクシャフトも折れますって(爆


で、ホンダ車のプーリー側シャフトに付くパーツ、プーリーやフェイスを全て含めると約600g前後になります。

フライホイールはライブが670g程度、縦型は700g前後ですから、左右の重量バランスについてはさほど問題が無いかと思われますが…

実際は、バランスが一番悪いと思われるクランクシャフト左側の末端に、250gを超える重量の鉄ドライブフェイスがぶら下がってます(爆

…これじゃあ左側の回転軸としてはバランスがどうこう、と言ったLVでは無いでしょうね。

そこそこまともな精度を出して回転させられている事の方が不思議になってきますよね…

(それでも、ある意味「クランクを支持している」オイルポンプギヤが存在する内はまだマシでしょうけど)


普通に走行しているだけでもクランクベアリングが壊れるライブの話は有名ですが、こんなバランスではそれもうなずけますよ。

そしてボアアップ防止?の狙いがあると思われる、極度にバランスの悪い純正クランクベアリングが組み合わされば、ある意味無敵ですよね(笑

「ノーマル以上の負荷をかけると壊れる」という対策なのでしょうが、普通に1万km走行でも壊れるのではもうやりすぎと言う他ありません。

その技術力を、横置きJOGに勝るエンジン設計として生かしていないのは何故なのかと…いつも思ってますよ私。


私はノーマルレースと言う、エンジンの基本設計が性能にモロに出る競技をやっておりますので、余計にそれを痛感するんですよね。

実際レースだと、JOGとは比較にならない位のメンテナンスとお金が必要ですし…それで性能は圧倒的に負けですから(泣

せめてJOGと同等の性能を確保した上で、対策を施せば良いと思うのですがね。

もっとも、ホンダさんが本気でやると…50ccには似つかわしくない性能が出るからだと思っていますけれどね。(NSR50を見れば…)

(Dio系の「デチューン」は変速比しかりトルクカムしかりですが…)


…しかしボアアップ対策がかなり裏目に出てますよねホンダさんは。通常の使用でも壊れるのではちといただけませんよ・・・

ちなみにクランクシャフトをキッチリ芯出ししていても、運が悪ければあっさり壊れますよライブって。

これは以前のコーナーでご紹介した「ケースの精度」による物だと思われますけれどね。



次にクランクシャフトの…一般的には何と言うんですかねコレ(汗

「カウンターバランス」でしょうか?良く知らないのですが、クランクウェイトのバランスについて少々。

これも図をご覧下さい↓


クランクウェブ比較 これは左側がホンダ縦型、右側がヤマハのクランクウェブを「内側から見た」図になります。

…もちろんこのバランス差にも何か大きな意思が働いていて狙いはあるのでしょうが…私には分からないLVですので(汗

単純に「回転物のバランス」を考えると、中心点に対して非対称なのは納得出来ませんねぇ。

もちろん回転方向に対してのバランスも考えた重量配分なのでしょうが、そう考えると「回り出せばスムーズに回る」重量配分かと思われます。



…これは私の知識ではちょっと分析しかねるのですが、クランクケースに入った混合気の回転を助けている、といった解釈もアリでしょうか。

ホンダの場合、第3掃気ポートへ向かって「かき上げられる」混合気の整流効果を狙っているのでは?とも思います。

ヤマハの場合、ピストンリードでもケースリードでも第3掃気への通路自体が非常に良い設計なので、そこは考えなくても、シリンダーからの「負圧」できちんと第3掃気ポートへの掃気が行われているのでは無いでしょうか。

(ヤマハエンジンはケースからの「混合気の吹き上げ」よりも、シリンダー内の負圧で「混合気を吸える力」の方に重点を置いている設計だと私は分析していますが)


この辺りも想像の域を出ませんが、少なくともヤマハ系エンジンに「勝てる」要素では無いと思いますよ…

(ちなみにライブのウェブは50:50のバランスの様ですね)



では次に、「クランクシャフトの支持点」について少々。

これもクランクの設計によりけりかと思いますが…とりあえず画像をどうぞ↓


クランクシャフト比較その3 左右のクランクウェブを含めた「全体の厚み」の差に注目です。

どう見てもホンダウェブはヤマハウェブより狭いですね。

したがって…クランクベアリングで「支持している」部分にも差が出ます。

ホンダクランクはヤマハに比べていくぶん「内側」を支持して回転させている事になりますね。

(ヤマハはベアリングが付きっぱなしなので、どこを支持しているのか分かりやすいかと)


…ここでも基本的にホンダの「弱さ」が出ていますね。

コレに加えて、縦長のクランクベアリングを使用するのですから…ヤマハより「回転軸の中心点に近い内側を、薄いベアリングで支持している」事になります。

クランクシャフトの左右バランスはともかく、もう少し「外側」を支持出来れば、耐久性も格段に上がると思いますがね。

もっともその場合、クランクシャフトの精度が悪いと、ブレている部分を支持する事になってしまいますので、芯出しの精度にもよりけりですが…

クランクシャフト末端に近い所を支持すればする程、「軸のブレ」の影響は大きくなって来るはずですからね。

ちなみに純正クランクの精度だと…少なくとも私の経験ではヤマハの方に分がありましたし、大きくブレているクランクシャフトだと「内側を支持」せざるを得なくなりますし。

ソレを見越してヤマハクランクの精度は良いのかもしれませんが…妄想なので聞き流して下さいな(笑


…実はホンダベアリングでも対処する方法が無い事も無いのですが…これは最高機密なので、バラすと間違いなく暗殺されるので今は言えないです(汗

いずれ「形」になって来たら公開しようかと思っていますので…期待せずにお待ち下さいね。


捕捉ですが…ヤマハのコンロッドって軽そうですよね(笑

ヤマハではコンロッドの大端ベアリングが破損したことは無いので…それが原因かも?

ちなみにホンダでは結構逝きますので(爆


で…クランクウェブの「幅」なのですが、コレって性能にかなり影響していると私は思ってますよ。

ケースとのクリアランスがギリギリの方が良いのは、1次圧縮比の点から見ても明らかですが、それ以外に一つ。

前述した「ケースからの掃気の吹き上げ」ってありますよね。第3掃気に向かう気流はともかく、第1&第2掃気ポートへ向かう「吹き上げ」も0では無いと私は思っています。

要は、クランクウェブとケースのわずかな隙間から吹き上げる混合気、ですね。

コレ、ピストンが39パイのホンダ縦型では…クランクウェブの方が「幅」がかなり狭いんですよ(笑

どう言う事かと言いますと…「クランク廻りより吹き上げた混合気がピストンの裏に向かって行く」という事ですね。

微々たる物だとは思いますが、そういった掃気の方向性もあるはずなので、クランクウェブがピストン幅に対してあまりに狭いのは良くないと私は思います。


その証拠、といいますか裏付けに…ホンダNSR50ってありますよね。あれは縦型Dioと同じ39パイピストンなんですよ。

しかしクランクウェブは、ピストン幅よりはるかに広く、ウェブ自体もかなり体積が大きいです。

NSR50はピストンリードエンジンなので、ケースリードよりもさらに掃気の効率を考えなければなりませんので…おそらくそういった狙いがあるのでは?と私は思っていますよ。

なので…ボアアップ車両等でピストンが大きくなると、そういった「ケースから掃気ポートへの掃気効率」の方向性も考えなくてはダメなんですよ。

特に縦型Dio系は…その辺りをうまく考えないと、極端なボアアップは排気量ほどの意味は無いですよね。

何故Dioの社外ピストンには穴が空いているのか等…その辺りにツボがあると言っておきます(汗



では最後にオマケ…と言いますか、腰下のコンテンツで言い忘れてたコトをひとつ(汗

ベアリングの「共回り」についてなのですが、これを具体的な写真でどうぞ↓


ベアリング回り跡 左から、「FS-JOGに使用の某特殊ベアリング」、「ノーマルちっくなJOGに使用の純正」、「純正新品」です。

左のFSに使用したモノは…さすがに回り跡が一杯付いていますね。

ちなみにケース側はかなり酷く回り跡が付いていたので、ベアリングもかなり回っていたハズです。

真ん中の物はライトチューンで1万km程度の物ですから、まあ普通の劣化具合です。


フルチューン、ライトチューン、新品の3種類の比較になります。

全てJOGでの「6204」規格のモノですが、いくらJOGの腰下精度が良くてもベアリングは回るときは回りますよ(笑

ヤマハは元々ケースとベアリングのクリアランスがホンダに比べて大きめっぽいので、ホンダに比べると回りやすい傾向にある様に思われますね。

こういった「キズ」で、劣化具合を判断するのも一つの目安としてお考え下さいね。



さてさて…何だか無茶苦茶長くなりましたが、とりあえずこれにてホンダVSヤマハのクランクシャフト&ベアリング比べは終了です。

…ホンダには全く勝ち目が無いですけど_| ̄|○

ホンダ好きの私から言わせて貰っても…どうやってもヤマハの設計に勝てるとは思えないですけどね…


あまり好きなメーカーをこき下ろしたくは無いのですが、今回ばかりは話が違いますよ。

私もライブのクランクベアリング破損で悩まされた一人ですから(笑

本音を言いますと…ホンダライブDio-ZXというスポーツ志向の最高グレード車でも、ヤマハの「89年式横置き初代モデルJOG・オバチャン仕様」にも負けていると思ってますんでね(泣

あくまでエンジンのお話ですが、腰下だけでは無く駆動系等もですけど…


結局、ホンダエンジンの愚痴ばかりになってしまいましたが…実際ヤマハに比べるとこういった「差」もあるのだと思って頂ければ嬉しいですよ。

なんのかんの言っても、結局私もホンダスクーター好きですからね…



「スクーター改造」に戻る