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掃気ポートについて



さて今回は、前回の排気ポートに続き、「掃気ポート」についてお話したいと思います。

これの形状も、エンジン出力を左右する非常に重要なファクターとなっていますね。


掃気ポートは、排気ポートとも密接に関係してくる物ですが、まずは基本の働きを解説いたします。

まずはこちらをご覧下さい。


各ポート

これは各ポートをシリンダー上面より見た図になります。

一般的なケースリードエンジンのケース吸気、そして排気1ポート&掃気5ポートの定番シリンダーとお考え下さい。

(掃気ポートの向き等はおおよそです。向きに付いては後にご説明致します)

(見づらい場合はクリックで拡大して下さいね)




以上の様に掃気ポートは、


第1掃気ポート

第2(補助)掃気ポート

第3(ブースター)掃気ポート


といった3種類に分類されます。



まず掃気ポートの働きは、燃焼後の排気ガスを押し出しつつ新気(新しい混合気)をシリンダー内に圧送するといった物が基本となります。

これをメインの仕事としているのが「第1掃気ポート」、すなわちメインの掃気ポートですね。


次に第2掃気ポートは、第1掃気ポートの掃気を補助する形での掃気を行っています。

すなわち文字通り「補助」の役目ですね。第1掃気ポートより開口面積が狭いのが特徴です。


そして第3掃気ポートですが、これはシリンダー後方からヘッドに向けて新気を押し出し、なおかつ燃焼室付近の排気ガスを排気ポートに向かってかき出す役目があります。

他の2種類とは少々違い、「ブースターポート」とも呼ばれるゆえんですね。


基本的な働きはこの様になります。


ちなみに良く言われる反転掃気といわれる物は、具体的にはこうなっています↓


反転掃気(上) 反転掃気(横)


第1掃気ポートの混合気噴出し角度を上から見た場合、左図の様になっています。

文字通り、第1掃気ポート口より後ろ側に向かって噴き出し、一度反転して排気ポートに向かいます。

そして真横から掃気流を見た場合、右図の様になっています。

こちらも少々上向きの角度で掃気が噴き出し、シリンダー後面をなめるように通り、燃焼室の後ろ側から排気をかき出す流れになっていますね。


余談ですが、「2stの掃気、排気の流れを肉眼で見た人はいない」と言われています。

私ももちろん直接見た訳ではありませんので、おおむねこのような流れだと思って頂ければよろしいかと思います。

(100%の自信がある訳ではありませんが…)




さて、これで一応の基本の流れはご理解頂けたかと思います。

ではここから、物理的な掃気ポートの噴き出し角度&大きさについてのお話を。

すなわち、掃気ポートの形状ですね。


…特に噴き出し角度は、掃気ポート通路の絶対的混合気流量、すなわちシリンダー内への充填効率よりも重要な問題なんですよ。

ただ掃気ポートの幅や太さを広げ、1回のピストン運動での掃気の流量(シリンダー内に入る混合気の量)を増やせば、当然決まったシリンダー容積内に 大量の混合気を掃気させる事が出来、爆発力が上がりトルクが出せます。

(キャブやリードバルブの大径化と同じ理論ですね)

しかし…掃気ポートという物はむやみに広げて良いと言うものではありません。


掃気の流量を増やすために掃気ポート通路を拡大してしまうと、掃気の流速が遅くなってしまいます。


これはどういう事かと言いますと、

アクセルを開けた時のエンジンの回転上昇が鈍くなる

と言う事です。



…排気量やチャンバーが同じなら、排気効率による排気ガスの「引っ張り効果」は変わりませんので、シリンダー内に混合気が掃気される勢い(負圧)は変わらないハズです。

そこに至るまでの「穴」(掃気ポート)だけが太くなっても、その穴を通る混合気の流速は上がるどころか下がってしまいますね。


少々のボアアップ程度でしたら、排気量が上がる事による混合気充填効率の増加と、排気量に合わせたチャンバー&排気ポートの拡大化=排気の勢いの増加による新気の引っ張り効果があります。

ですので無理矢理掃気ポート通路を拡大して、わざわざ掃気の流速を落とさずとも良いと思います。


逆に排気ポートはこれでもかと言う位拡大すべきだと私は思いますが…もちろん排気量に見合ったサイズと言う事が大前提ですが。



ここで良くあるパターンをひとつ。

社外品ボアアップキットは色々ありますが、中にはただシリンダー内壁を「ボーリング」しただけの、排気量UPだけを狙った物もありますね。

…いつもメーカーさんにケンカを売る様な言い方ですが、この様なKIT物はハッキリ言って全く走りません。

具体的には、ヘタなボアアップKITを購入された事がある方なら経験がおありだと思いますが…


「トルク」は上がるが、回転上昇&レスポンスが悪い



といった感じになります。


本当にダメなシリンダー(ポート)は、どうセッティングしても回転上昇やレスポンスUPには繋がらない物なんです。

これも以前ご説明致しましたが、耐久性や熱問題を考えられているのだとは思うんですが…

しかし、「排気量を上げればトルクに頼ってスピードが出せるので、回転上昇は少し鈍くなっても良い」などとは私は思いません。

確かに2種スクーターの様に、そういったセッティングもありだとは思いますが、50ベースのボアアップですと、回転上昇&レスポンスの良さを犠牲にしてまでエンジン特性をトルクに振ってもあまり効果は無いと思っています。

68cc等そこそこの排気量では、回転上昇の速さを犠牲にしてまでトルクに振るのはいかがなものかと…

そんな中途半端なエンジンを作る位なら、「50ccと変わらない回転上昇&レスポンスの良さで、なおかつ排気量に見合ったトルク」が欲しいですね。


実際、メーカーさんがその様な物ばかり発売した場合、ノーマルオイルポンプでの分離給油ではまず追い付きませんし熱の問題も出てくるのが目に見えています。

クレーム処理が大変そうですね・・・(汗


世の中、「排気量を上げればパワーUP」といった定説があるかもしれませんが、少なくとも50ccスクーターの一般市販ボアアップKITでは、このポートによる関係で、爆発的な性能向上は望めない物なんです…



…前置きが長くなりましたが、それではボーリングのみの市販ボアアップKITは、何故ポートがダメになっているのでしょうか?

まずこちらをご覧下さい↓


ボーリング-1 ボーリング-2



左の図は、シリンダーを真上から見て、少々ボーリングによってボアを広げるイメージです。

(赤線の部分がボーリングによって削られる訳ですね)

そして右側の図の赤斜線部が、ボーリングによって削られてしまう「ポートの開口部」です。


…単純にノーマルシリンダーにボーリングを施しただけですと、こういった感じでポート開口部が削られ、


掃気ポートの噴き出し角度が変わってしまうのです。


最初にご説明しました様に、掃気ポートの「噴き出し角度」は、エンジン特性に対してかなりの影響力があるんです。

図で示しますとこの様な感じですね↓


掃気噴き出し角度-1 掃気噴き出し角度-2



左の図ですと、便宜的にですがピストン中央部へ向かって掃気されていますね。

実際はピストン中央部への掃気がベストではありませんが、例えですのでご容赦を。

そして右図の様に掃気ポート開口部が削られてしまった場合、本来ならピストン中央部へ噴き出さねばならない第1掃気ポートの噴き出し角度が、 排気ポート側に近い方向に向いてしまい、新気を十分にシリンダー内に留める事が出来なくなってしまいます…

と言う事は、掃気うんぬん以前に、新気が排気ポートへ直接「抜けてしまう」といった状況になってしまいますね。

これではいくら排気量が上がっていても、反転掃気が上手く行かずパワーUPには絶対に繋がりませんね…


もちろん、自分でポートを加工した場合も同じです。

下手に掃気ポートの噴き出し角度を変えると、こういった症状におちいる事はありますので。


ちなみに私の理想では、


第1掃気ポートはシリンダー後ろ方向へ掃気

第2掃気ポートはシリンダー壁面に対して垂直か少々後ろ方向へ掃気


といった感じがベターなのでは?と思います。

特にメインである第1掃気ポートは、間違っても排気ポート側やピストン中央部に向かっての掃気方向にしてはいけません。

新気をただ排気側に逃がすだけになってしまいますので。



次に第3掃気ポートです。

こちらもやはり向きによる弊害は存在します。

横からの図になりますが、この様な感じでしょうか↓


第3ポート

青線の様に、燃焼室の内側を後ろから舐める様に掃気するのが良いと思います。

対して赤線は、プラグの方向に掃気が噴き出していないので非効率的では?と思われますね。

(掃気の方向的には、第3掃気からの新気が直接プラグに直撃する感じでしょうか…)






そして最期に、第1&第2掃気ポートの「上方向への噴き出し角度」をご説明致します。

これは横方向の噴き出し角度ほどシビアでは無いと思うのですが、それでも理想形はある様ですね。

これは基本的に、「ピストンを舐めるように掃気する」のが良いと思います。

すなわち、この様な感じです↓


掃気ポート横方の向噴き出し角度 青線の様に、ほぼ真横に向かっての掃気が効率的だと思います。

ピストン上昇時にも掃気ポートは開いていますので、ピストン上昇の勢いでも掃気を促進されやすい形状だと思われます。

ちなみにものの本によると、第1掃気ポートの掃気流上昇角度は15度前後が理想では?となっています。

第1掃気は約15度、第2掃気は約30度がストリートエンジンの基本の様ですが、ポートを上向きにするとポート通路の断面積が減ってしまうため、レーシングエンジンでは第1と第2掃気ポートには角度差を付けないのが良いらしいです…(某書より一部抜粋)



なお捕捉ですが、横方向の「噴出し角度」と同様に、ポート自体の高さ(ポートタイミング)も、シリンダーをボーリングした場合だとかなりのローポートになってしまいます。

これは排気、掃気両方のポートで起こる物ですので、これも合わせて考えてやらないとダメですね。

世の中にはノーマル以上の高回転型ポートタイミングになっているボアアップKITも多いですが…これについては多くは語りません。

排気タイミングさえ上げれば良いというモノでもありませんし、ポートタイミングが分からないシリンダーだと、エンジン特性の方向性まで分からなくなるのと同じですのでね…



かなり長くなってしまいましたが、これで一通りの掃気ポートについての解説はおしまいです。

私自身、掃気ポートを自由自在に加工する事はきわめて難しいのですが、理論としては一応考えているつもりです。

ですのでここを読まれた皆様も、「ある一つの理論」としてお考え下さい。

ポートには製作者の理論がそれぞれある物ですし、私の理論が絶対に良いなどとは限りませんので…


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