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排気ポートについて
なお、一般的な2ストロークエンジンの構造、各ポートの名称&働き等、基本的な事柄については、閲覧者の方々がご理解されているといった事を前提でご説明致しますのでよろしくお願いします。
「こう削ったら高回転が伸びた」といった様な、「やってみて結果を模索する」という方法ではあまりにも危険&効率が悪すぎますので。
そして基本的な理論が分かっていない場合には、どこかで必ずデメリットが出てきますので、そうならないような基本的なポイントをご説明致します。
・・・相変わらずの長文ですのでじっくりお読み下さいね。
まず2ストロークエンジンの場合、排気ポート形状がパワーの出力&特性をほぼ決定してしまう重要なファクターになります。
圧縮→点火→爆発→といった流れでピストンが下降し、まず一番初めに開くのは排気ポートになりますね。
すなわち、「ヘッドでの爆発圧力を利用して、排気ガスを放出している」という事です。
勢いよくブローダウンさせてやれば、ピストンがさらに下降し掃気ポートが開きはじめるまでに、排気ガスを効率よく排出させておく事が出来ます。
すなわち、掃気ポートが開き始め、クランクケースで1次圧縮された混合気が燃焼室に掃気されるという仕事をはじめた場合、新しい混合気が充填されやすいという事ですね。
(掃気される混合気の勢いで排気ガスを「押し出す」という仕事も存在しますが、それよりはまず排気が「効率良く抜ける」方が重要なんです)
まず排気ポートが開き、燃焼済み混合気(排気ガス)を押し出しますね。
この段階ではまだ掃気ポートは開いていません。
もちろん排気ポートが一番速く開きますが、掃気ポートが開くまでにはある程度排気を行っておく必要があります。
(第1&第2掃気ポートは割愛しています)
チャンバー末端で発生する反射波のタイミングが早ければ早い程、掃気&排気のサイクルが速い高回転でも確実に「新気をシリンダーに押し戻す力」の効率が良くなるという事です。
(短いチャンバーだと、チャンバー末端の絞りの最後の部分までの距離が短く、反射波のスピードが同じなら「速く」シリンダーまで帰ってくるワケですね。すなわち「短いチャンバー=高回転での充填効率を重視した物」
ここでは、エンジンの出力特性を大きく左右する、「排気ポート」の形状について触れたいと思います。
・・・特に排気ポートと言う物は、これ一つでエンジン出力特性の8割方は決定されてしまうと私は思っていますので、各ポートの働きをしっかり把握出来ない場合には、ポートチューンはされない事をおすすめしますよ。
これを一般的に「排気ガスのブローダウン」といって、これの勢いが、チャンバーによる「充填効率」に大きく関わって来ます。
そして一気に排出された排気ガスは、チャンバーによるカデナシー効果で「反射波」を生み出し、掃気ポートから噴出される新気(新しい混合気)が直接排気側に流れ出るのを抑える力を発生しますね。
この様な働きをする排気ポートですが、ノーマルでは排気音の消音&低回転のトルクを稼ぐために、必ずしも理想的なポート形状になっているとは言えません。
そこで、まず排気ポートの形を整えるのがポートチューンの第一歩になります。
ではこちらの図をご覧下さい↓
排気ポートをシリンダー内側から見た物だと思って下さい。
まず@ですが、これが基本的にノーマルシリンダーによくあるパターンです。
上側が山形になっており、排気ポートが開き始めた瞬間のブローダウンの勢いはイマイチです。
メリットとしては、徐々にブローダウンが起きますので「低回転でも抜け過ぎない」「チャンバーに伝わる爆発音が静か=排気音が静か」といった所でしょうか。
しかしスクーターチューンの場合、「エンジン自体の低回転の力」は全く無視できる物ですので、ある意味割り切って考えられますね。
(といいますか、2ストエンジンで低回転の力を出すのはすごく難しいと私は思ってます)
ですので基本的に「排気ポート上側は一直線」というのが私の基本になっております。
そして、一応理想の形状としてAのような形があります。
これは@のポート上側の山型の頂点部から、真っ直ぐ直線的に左右に広げた感じですね。
排気タイミングが変わらない様に、山型頂点部を「排気ポートの開き始め」とし、そのポイントは変えずに「一気にブローダウン出来る形」といった物です。
ピストン上部は当然一直線ですので、排気ポートが開いた瞬間にノーマルとは比べ物にならない勢い&効率で排気が開始されます。
ただパワーバンドを変えずに、パワーバンド内の出力を上げたい場合はコレが一番効果的な形になりますね。
そしてBですが、これはブローダウン直後の排気効率を最優先しています。
燃焼室での爆発力が強ければ強い程、排気ポートが開いた瞬間のブローダウンの勢いは強くなりますね。
排気の流速を落とさない程度にバランスを取っているという事です。
(こういう形の場合、排気ポート上側はノーマルより広くなります)
が、ピストンが下降して排気ポート開口面積が広くなって来た場合、いくら掃気の勢いで排気が助けられるといっても排気流速には限界がある様です。
排気ポートの開口面積が広くなってくると、排気がチャンバー側で引っ張られる力が一定だと考えた場合、排気自体の「流速」は落ちますよね。
これをカバーするための形なんです。
排気ポートが徐々に狭くなり、排気ポートが開ききる直前でも排気の勢いを弱くしない形、といった感じですね。
ただ、排気ポート加工の場合、横幅は広げすぎても排気の流速を遅くしてしまいますので、実際は上側を左右2mmずつ広げ、そこからノーマル下側の幅に向かって斜めに削り下ろす、位が無難では無いでしょうか。
排気ポート広さとチャンバーの特性が合わないと、音ばかり大きくなりパワーバンドがスカスカになってしまいますので。
ポート上側の削りこみ(排気タイミング)も上げすぎるとチャンバーとの同調が取れなくなり良くありません。
50ccノーマルシリンダーベースですと、チャンバーにもよりますが2〜3mm程度のUPに留めておいた方が無難です。
そして排気ポートの高さを上げた場合、それによる有効圧縮比(2次圧縮比)の低下が起きますので、ヘッド面研等の調整で2次圧縮比を保ってやらなければなりませんね。
こちらは私のシリンダーです。
何の変哲も無い長方形ポートになっていますね。
ここで補足ですが、「排気ポートを上げる」と、何故パワーバンドが高回転側に移行するのでしょうか?
これは「排気温度」と密接な関係があります。
排気自体はほぼ音速で移動する物ですので、これの温度自体を高めてやれば排気のスピードが上がりますね。
すなわち
排気ポートが速く開く=点火され燃焼した混合気が、シリンダー内壁等にあまり放熱を行わないまま排気チャンバーに放出される=排気温度が高められる
という事になります。
チャンバーのエキパイ部分に耐熱材を巻いて、排気温度を高めるのと似た様な理論ですね。
(後、点火時期の遅角もこれに当たりますね)
注:このパワーバンド変化の理論は今では違っていると思っています。
詳しくは「排気タイミングと排気流速について」のコーナーをご覧下さいませ。
では次に、シリンダー外壁側(チャンバーのエキパイ側)&排気通路の形状についてご説明します。
まず、チャンバー取り付け口の部分もノーマルでは狭いシリンダーがありますね。
これを広げてやるべきです。
この大きさもも排気流速と関係がありまして、JOGの様にシリンダー内壁部の排気ポート口より狭いのではダメですね。
私は「シリンダー内壁部の排気ポート開口面積=チャンバー取り付け口の面積=チャンバーエキパイ部の面積」が理想だと思っておりますので。
「内壁部排気ポート口径>エキパイ側口径」ですと、排気自体の流速は上がるかもしれませんが、ブローダウンの強いエンジンですと流速云々の前に絶対的な開口面積が足りなくなってきますね。
後、排気ポート上端部からチャンバー取り付け口(穴)の上側までは確実に「直線ライン」で仕上げるのが理想ですね。
この形も、排気のブローダウンの効率を大きく左右する物ですので。
おおむねこんな感じです↓
ちなみに排気ポート下側は少々曲がってても良いです。
チャンバーから反射波が帰ってくる場合に、上側(燃焼室)に吹き出させる(?)効果がある様ですので。
なお、チャンバー取り付け口が真円になるほど削る必要はありません。
排気ポート上端部から直線的に繋げるのが理想ですが、上側は少々段差があってもOKですね。
こんな感じです↓
参考までにどうぞ。
・・・排気ポートを5mmUP位の加工をしない限り、排気ポート上側から真円形状に加工したエキパイ側まで直線的に通路を作るのは難しいです。
(といいますか、そこまでやるとシリンダーに穴が開きます)
ですのでエキパイ側を無理矢理真円に加工し、ラッパ形状になり排気流速を落とすよりは、チャンバーに向かって真っ直ぐに排気を導いてやった方が良いと思われますね。
さて、これで排気ポートについての解説はおしまいです。
私は基本的な事しか分かりませんので、SS1/32mileで最近流行の変速的な排気ポート形状は良く分かりませんね。
・・・といいますか、人様にご説明する自信がありません(汗
逆台形ポートの変形パターンですし、掃気ポート上側に割り込む程拡大出来るのはワークスマシン位だと思いますが・・・
自分でもやってみたいのですが、さすがに個人LVでは無理っぽいですね(笑