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海苔ひびの入江に遊ぶ鴎らの雲洩るる日に嘴光る
新しき年の光は部屋に満ち盲夫とみそぎを受くごとく居る
人のこえ弾みをもちてあたたかし風邪の臥床にこもりいる窓
まぎれなく朝はきたりて射せる日にはぐくまれゆく花も果実も
シルバーホンの電話のつきてまた一つ不自由さ越えて生きゆかむわが
海の上同じところを鳴きわたる鳥の飛びゆく道あるかとも
確かなるわれの一日ときかけて縫い上げにけり春のカーテン
苦しみの生きを限りし美しさ永久にまなこをつむりたる顔
死してなほうからのもとに帰れざるみ骨は並ぶ霊塔の棚
七夕など古きならひの廃れゆく中に育つか子らのいじめも
風邪熱に臥して見し夢母居りき兄居りき蚕棚の間に
靴二足脱げばふさがる玄関も心やすらふわれらの城で
冬波はわが病む園をめぐらして洋中ふかき貝のごとしも
手にたたみよりたる皺のさすらひに思い及びて独りいとしむ
うから亡く家も残らぬ故郷にわれを包みて山あたたかし
岸のべに伸びたる萱は地に低く吹き伏せられて立ち直るなり
わが家の黒くすすけし大黒柱今の思ひになごむ幻
母と子の声ひびき合ふ遊園地歩めるわれに繋ぐものなき
裏を見せ表を見せて散る古葉季の移りのまざまざとして
鳶が輪を一つ描けば海に出る小島に五十四年うたかたにして
来む年は何が待ちいむかカレンダーの兎は長き耳をたている
この園に病みて知らざるそとの世界わが憧れてあこがれ古るる