吹かれ寄る落葉にもにてそれぞれの孤独あたためあへる盲ひら
弟の征ゆきし船尾の日章旗わが眼裏にはためき濡るる
五月雨を傘に打たせて帰りゆくこの天地の骨肉二人
ひそやかにこの園に生きて星祭る幸い住める世の外にして
何のその対立ならむ反核の旗かざしつつ今に争ふ
力を込め指なき指にて印を押すこれの署名に人救われよ
つくづくと逢い得ぬ逢ひを欲るこころ持ちて在る日をよろこびとせむ
妻の踏むミシンの音をわがうつつ倖せとして聞きいる日向
追い越してゆくさまざまの足の音道の歩みの中なる孤独
一人のいのち終りし夜の病室に人のざわめき束の間にして
転勤も昇進もなきうつそみのいのち古りゆく一つ処に
亡びたる平家とむらふ墓標の松いまに伝へて花なほ旺ん
帰りきて母国の己が墓に立つ戦いの哀れつづく今なほ
看護要員獲得交渉必死なりし日もまた疎し誰も老いたり
うかららにかかはりうすく生きるさだめ思ふ眼裏に天の河澄む
妻のその深き睡りは盲ひわがあしたを支ふ眼の憩ふとき
核廃絶願ふこころの一途にてわれも署名す指のなき手に
祀らるる靖国神社に弟の何安らふや家は亡びて
ありありと夢は色彩ともなへり闇の世界のわがいのちにも
人のさま確と見据える眼のありて庭に座れる雪のダルマは
磯洗ふ浪音ききて今日をありライの亡ぶる日の見えながら
泣かむさへ涙も嗄れし日の渚波は永久なる時をきざめる