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旱魃に地の上ほてり舌垂れしごとく夕べの時停止せり
酸素吸入つづけられいてそこだけが必死に夏の夜を生きてをり
草よりも木よりも飢えて雨を待つ血の性に焼畑農耕思ふ
赫赫と夜の山上に雨乞ひの火を焚きし百姓父らは絶えぬ
地の渇き極まりゆくか木々は葉を祈りのごとく垂れて静まる
窓際を離れずに啼く蟋蟀に思い浮かばぬひとりを捜す
まとまらぬ思念の中をぬけ出でてほうほうと虫の声に遊べり
満ち潮をたたへて重き夜の島の音なきときに平安はくる
夜の窓の網戸によりてくる虫と虫に寄る守宮を置きて灯を消す
暖かく枯れ草原を照らす陽のひそかに恋しひそかにさみし
匂いなき音なき冷えに寥寥と独りのわれの世界透け行く
全身をしぼりても何もなきわれと思ふ日優しれ草の音
人と語ることより深く魅せられて聞きをり裸木の枝に吹く風
払はれて枝ひとつなき篠懸けの冬の眠りをぽつねんと寝る
いちめんに波立つ海の波頭しぶきつつ島の夕暮れはやし
荒寥と昏れたる海の波しぶき冷え透り島の夜の木々うづく
波の音松風の音わがものとなさねば島の冬堪えがたし
夕陽背にして歩むとき失ひし今日が礫のごとくきらめく
混沌と泡立ちて思念煮つまらぬ釜の火を焚く深夜ほてりて
人間と対き会ふよりも切実に風ひびく日のありてつつしむ
活けられて寒菊はなほ寒菊であらねばあらぬ疼き匂へり
活けられし寒菊の悲哀夜の部屋に冴え静まりて誰も赦さぬ
冬空も裸木も見えぬ目に無くて佇めば昼の庭沈みゆく